私はこれまで、出会い系サイトを長く利用してきた。
いろいろな女性とメッセージをして、実際に会ったこともある。
年齢も違えば、仕事も違う。
住んでいる場所も違うし、性格も違う。
当然だが、出会い系サイトで知り合う女性は本当にさまざまだ。
その中でも、今でも記憶に残っている女性がいる。
イクヨクルヨで知り合った、耳の聞こえない女性だ。
最初に彼女のプロフィールを見たとき、私は少し迷った。
プロフィールには、自分は耳が聞こえないという内容が書かれていた。
正直に書く。
私はそれまで、耳の聞こえない女性とデートをした経験がなかった。
「どうやって会話をするのだろう」
「自分にできるのだろうか」
そんな不安があった。
手話もできない。
専門的な知識もない。
もし会っても、彼女を困らせてしまうのではないか。
最初はそんなことを考えた。
しかし、メッセージのやり取りを始めてみると、その不安は少しずつ消えていった。
メッセージでは普通に会話が続いた
当然といえば当然なのだが、サイト内のメッセージでは文字でやり取りをする。
そのため、耳が聞こえるかどうかはほとんど関係なかった。
「今日は仕事だった?」
「休みの日は何してるの?」
「カラオケは好き?」
そんな普通の会話だった。
文章から受ける彼女の印象は明るかった。
返信も比較的早い。
冗談のような文章も送ってくる。
私もだんだん、彼女が耳の聞こえない女性であることを意識しなくなっていた。
出会い系サイトでは、最初のメッセージが続かないことも多い。
数回やり取りをして終わる。
突然返信が来なくなる。
そんなことは珍しくない。
しかし彼女とは、比較的自然にメッセージが続いた。
そして、実際に会ってみようという話になった。
問題は場所だった。
普通ならカフェやファミリーレストランを選ぶところだ。
しかし、なぜか私たちはカラオケに行くことになった。
今考えると少し不思議な選択だったと思う。
耳の聞こえない女性とカラオケ。
私は最初、その組み合わせに少し戸惑った。
しかし彼女は特に気にしていない様子だった。
そこで私も、あまり深く考えないことにした。
待ち合わせ場所で少し緊張した
当日。
私は待ち合わせ場所に少し早く到着した。
出会い系サイトの初対面は何度経験しても独特の緊張感がある。
写真と同じ人が来るのか。
相手は自分を見てどう思うのか。
本当に来るのか。
待っている時間はいろいろなことを考える。
しばらくすると、彼女らしい女性が現れた。
私は軽く手を上げた。
彼女も私に気づいた。
そして笑顔を見せた。
最初の数秒。
私はどうすればいいのか少し迷った。
いつもの癖で、
「こんにちは」
と言いそうになった。
もちろん、声を出すこと自体が悪いわけではない。
相手によっては口の動きを読むこともあるだろう。
ただ、私は彼女がどのようなコミュニケーション方法を使うのか詳しく知らなかった。
すると彼女はスマートフォンを取り出した。
画面に文字を入力する。
「今日はよろしく」
そんな内容だったと思う。
私は安心した。
なるほど。
文字で話せばいい。
考えてみれば、イクヨクルヨでずっとやってきた方法と同じだった。
カラオケ店に入ってから気づいたこと
私たちはカラオケ店に入った。
受付では私が店員と話した。
部屋に入る。
普通のカラオケデートなら、ここから、
「何歌う?」
「最近何聴いてる?」
という会話が始まる。
しかし私たちはスマートフォンを使った。
私が文字を入力する。
彼女が読む。
彼女が入力する。
私が読む。
最初は少し時間がかかった。
普通の会話なら数秒で終わる内容でも、文字にすると少し時間が必要だ。
私は最初、沈黙が気になった。
出会い系サイトで知り合った女性との初デートでは、沈黙を怖がる男性も多いと思う。
私もそうだった。
「何か話さないと」
「つまらない男だと思われるかもしれない」
そう考えてしまう。
しかし彼女とのデートでは、そもそも会話の間に文字入力の時間がある。
自然に沈黙が生まれる。
不思議なことに、しばらくすると私はその沈黙が気にならなくなった。
彼女がスマートフォンに文字を入力している。
私は待つ。
画面を見せてもらう。
文章を読む。
少し笑う。
私も返信を書く。
それで十分だった。
耳が聞こえないのにカラオケは楽しめるのか
私は気になっていたことを聞いてみた。
カラオケは楽しいのか。
かなり直接的な質問だったかもしれない。
ただ、彼女とはメッセージである程度やり取りをしていたので、私は素直に聞いた。
彼女は嫌な顔をしなかった。
音の感じ方やカラオケの楽しみ方は、人によって違う。
振動を感じたり、画面の歌詞を見たり、自分なりの方法で楽しむ人もいる。
私はそのとき初めて、
「カラオケは音を聞く人だけの場所ではないのかもしれない」
と思った。
私は自分の基準だけで考えていた。
耳が聞こえない。
だからカラオケは楽しくないだろう。
そんな単純な考え方をしていた。
しかし実際に本人と会ってみると、私の想像とは違った。
彼女は普通に楽しそうだった。
私よりもリラックスしていたかもしれない。
私は一人で勝手に緊張していた
今振り返ると、私は会う前に必要以上に考えていた。
失礼なことを言ったらどうしよう。
コミュニケーションができなかったらどうしよう。
気まずくなったらどうしよう。
しかし実際には、彼女のほうが慣れていた。
当然だ。
彼女はこれまでずっと、自分なりの方法で人とコミュニケーションを取ってきたのだ。
一方の私は、耳の聞こえない女性とのデートが初めてだった。
経験がないのは私のほうだった。
彼女にとって私は、
「手話ができない男性」
だったのかもしれない。
それでも彼女はスマートフォンを使ってくれた。
私が理解できる方法に合わせてくれた部分もあったと思う。
私は後になって、そのことに気づいた。
手話ができなくても会話はできた
私は手話ができない。
今でもほとんど分からない。
だから、当時の私は、
「手話ができないと耳の聞こえない人とは会話できない」
というイメージを持っていた。
しかし実際は違った。
スマートフォンがある。
メモ帳アプリがある。
文字を入力できる。
紙とペンでもいい。
身振りでも伝わることがある。
もちろん、すべての人が同じではない。
コミュニケーション方法は本人によって違うだろう。
だから勝手に決めつけるのではなく、本人に聞くのが一番いい。
「どうやって話すのが楽?」
その一言を文字で聞けばいい。
私はこのデートで、それを学んだ。
分からないことを勝手に想像して不安になるより、本人に確認したほうが早い。
これは出会い系サイトのデート全般にも言えることかもしれない。
カラオケなのに会話のほうが記憶に残っている
その日、何曲歌ったのかは覚えていない。
私が何を歌ったのかも、ほとんど覚えていない。
しかしスマートフォンの画面をお互いに見せながら話したことは覚えている。
文字で会話をすると、不思議な感覚がある。
声の会話では、思いついたことをすぐに口にする。
そして言葉は消えていく。
しかし文字の場合、一度文章を考える。
入力する。
読み返す。
相手に見せる。
私は普段より少しだけ、自分の言葉を考えていた気がする。
彼女も画面に文章を入力していた。
私はその時間を待っていた。
会話のスピードは遅い。
しかし、だからつまらないわけではなかった。
むしろ私は相手の言葉を待つようになった。
普段の私は、自分が話しすぎることもある。
相手の話が終わる前に次の話題を考えてしまう。
しかし彼女との会話では、それができない。
文字が完成するまで待つ。
そして読む。
それから返事をする。
今思えば、私はこの日、
「相手の言葉を待つ」
ということを少し学んだのかもしれない。
出会い系サイトではプロフィールを読むことが大切
イクヨクルヨに限らず、出会い系サイトではプロフィールをあまり読まない男性もいると思う。
写真を見る。
年齢を見る。
住んでいる場所を見る。
そしてすぐにメッセージを送る。
私も若い頃はそんな使い方をしていた。
しかしプロフィールには、その人が伝えておきたいことが書かれている場合がある。
彼女は耳が聞こえないことを書いていた。
私は事前に知ることができた。
もし何も知らずに待ち合わせをしていたら、私はもっと戸惑っていただろう。
プロフィールを読む。
分からないことがあれば、メッセージで確認する。
当たり前のことだが大切だと思う。
特にコミュニケーション方法については、本人の希望を聞いたほうがいい。
勝手に特別扱いする必要もない。
逆に、何も考えず自分の方法を押しつける必要もない。
相手が話しやすい方法を確認する。
それだけでいいのだと思う。
恋愛に発展したわけではなかった
では、その女性と付き合ったのか。
結論を書くと、交際には発展しなかった。
何度もデートを重ねたわけでもない。
出会い系サイトを長く使っていると、こういう出会いはたくさんある。
会った。
話した。
一緒に時間を過ごした。
しかし恋人にはならなかった。
だから失敗だったのか。
私はそうは思わない。
恋愛に発展しなかった出会いにも、記憶に残るものはある。
彼女とのカラオケデートは、まさにそうだった。
私はそれまで、
「会話=声で話すこと」
だと思っていた。
しかし違った。
文字でも会話はできる。
表情でも伝わる。
相手が笑えば、楽しいことは分かる。
少し困った顔をすれば、何か伝わっていないのかもしれないと気づく。
人間のコミュニケーションは、私が思っていたより広かった。
イクヨクルヨで出会った女性から学んだこと
出会い系サイトというと、恋人探しや男女の出会いだけを想像する人もいる。
もちろん、それが大きな目的だ。
私自身も女性と出会うために利用していた。
しかし10年以上いろいろな出会いを経験すると、ときどき自分の考え方を変えるような人に会う。
耳の聞こえない彼女とのカラオケデートも、その一つだった。
会う前の私は不安だった。
どうやって話せばいいのか分からなかった。
しかし実際に会ってみれば、スマートフォンで文字を打てば会話はできた。
彼女は笑った。
私も笑った。
カラオケの部屋で、二人でスマートフォンの画面を見せ合っていた。
少し変わったデートだったかもしれない。
でも、嫌な思い出ではない。
むしろ今でも覚えている。
私は出会い系サイトで本当にいろいろな女性と会った。
その中には、もう顔を思い出せない人もいる。
名前を忘れてしまった人もいる。
しかし彼女とのカラオケデートは忘れていない。
音のあるカラオケルームで、私たちは文字を使って会話をした。
あの日、私は少しだけ「会話」というものについて考えた。
声がなくても、人は話せる。
大切なのは、自分の普通を相手に押しつけることではない。
相手がどんな方法なら話しやすいのかを知ろうとすること。
出会い系サイトでの一度のデートだった。
恋愛にはならなかった。
それでも私にとっては、長い出会い系サイト利用歴の中で今も記憶に残っている一日である。


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