出会い系で知り合った彼女と初めて会った日。
メッセージは毎日続いていたが、まさか本当に会えるとは思っていなかった。彼女は新宿に住んでいて、僕は群馬・前橋。距離にして100km以上。電車で片道2時間弱。
正直、「そこまでして来てくれるだろうか?」と不安だった。
しかし待ち合わせ時間の10分前、スマホが震えた。
「着いたよ、今、前橋駅の北口にいる。」
その一文を見た瞬間、胸の奥が熱くなった。
遠い場所から、僕に会うためだけに来てくれた。
画面越しの存在だった人が、今、同じ街にいる。
それだけで世界が少し鮮やかに見えた。
駅で合流すると、彼女は少し緊張した笑顔で立っていた。
僕も同じだった。メッセージではよく話していたのに、いざ目の前にすると言葉が出てこない。でも、その沈黙はなぜか居心地悪くなかった。
「じゃあ行こうか」
そう言って、並んで歩き出した。
前橋の街を歩き、カフェでランチを食べた。
彼女はメニューの写真を撮るタイプで、僕は写真を撮らないタイプ。価値観は違う。でも、違いを嫌だと思わず「そういうのもいいな」と思えた。
食事中の会話は途切れることなく続いた。
仕事の話、趣味の話、過去の恋、好きな音楽。
次第に緊張が溶けて、気づけば笑い合っていた。
午後は散歩しながら、群馬の風を感じた。
都会の喧騒とは違う、ゆるい時間。
「なんか落ち着くね」と彼女が言った。
その一言が嬉しかった。
夕方になり、駅まで送りながら思った。
「もっと一緒にいたい」
「また会いたい」
でも強引に言葉にするのは違う気がした。
代わりに自然に聞いた。
「また、来てくれる?」
「うん。また来たい。」
その返事が僕の胸に静かに落ちた。
あぁこの子、運命かもしれない——と。
恋はドラマのように劇的ではなく、それは小さな積み重ねで生まれる。
遠くから来てくれたこと。
笑った顔が綺麗だったこと。
同じ時間を心地よく過ごせたこと。
無理に盛り上げなくても、自然と距離が縮まったこと。
出会い系は「不安」もある。
でも行動した人にしか掴めないものがある。
彼女が電車に乗って前橋まで来たように、
誰かの人生に踏み込むのは勇気だ。
その勇気が恋を動かす。
この日から僕は思う。
恋は距離じゃない。
向き合う姿勢と、一歩踏み出す気持ちだ。
画面の向こうの誰かが、現実の隣で歩き出す瞬間。
それは、もしかすると運命の始まりなのかもしれない。


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