【体験談】家庭訪問の日、親が不在で音楽の先生と二人きり|淡い憧れのはじまり

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中学二年の春、家庭訪問があった。普通なら親と先生と三人で話す時間。でもその日は母が仕事で帰れず、父も出張で不在。僕ひとりで家にいたところへ、音楽の先生が訪ねてきた。インターホン越しに聞く柔らかな声だけで急に緊張した。先生は普段から静かで落ち着いた女性。笑うとき、少し頬にえくぼができる。それだけで教室の空気が柔らかくなった。

玄関を開けると、先生は少し驚いた顔で言った。

「今日は一人なの?しっかり者だね」

その言葉で胸が熱くなった。褒められ慣れていなかった僕には、大人の女性からのその一言が特別に聞こえた。
ダイニングテーブルに向かい合って座り、先生は成績や授業態度について丁寧に話す。家庭訪問というフォーマルな場なのに、僕は心の半分で別の音を聴いていた。
目の前にいるのは、大人の女性。優しくて、言葉選びが柔らかくて、香りもほんのり甘い。僕は返事がぎこちなくなり、先生は時折笑ってくれた。

「緊張してる?大丈夫。あなたのペースで話せばいいから」

その声に、肩から力が抜けた。僕の話にうなずきながら、真剣に聞いてくれる。
先生は恋人でもなく友達でもなく、親とも違う距離感だった。不思議な安心と、少しの背伸び。
会話は10分ほどで終わる予定だったのに、気づけば30分ほど話していた。
好きな音楽、部活の悩み、将来のこと。聞かれるたび、僕は一言ずつ言葉を探しながら答えた。

最後に玄関で靴を履く先生が振り返って言った。

「あなたと話すと落ち着く。また学校で聴かせてね、ピアノ」

恋の告白ではない。それでも当時の僕は胸の奥がぎゅっと締まるような感覚に包まれた。
大人の女性と同じテーブルで向き合って話す。それだけで世界が少し変わって見えた。

今思えば、あれは恋ではなく、尊敬と憧れが混ざったものだった。
でも、その小さな火種が僕の中に残ったまま大人になった。
出会い系で年上女性に惹かれる理由を考えると、いつもこの日の光景が浮かぶ。

柔らかい声で話を聞いてくれる人。安心できて、背伸びしたくなる人。
あの家庭訪問は、僕の恋愛観の最初の章だったと思う。

恋愛は突然始まるんじゃなく、こういう淡い記憶の積み重ねで形になるのかもしれない。

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