【体験談】高校時代、4つ上の従姉妹と日帰り旅行に出かけた日|淡い期待と大人の背中

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高校の頃、4つ年上の従姉妹と日帰り旅行をしたことがある。
行き先は近場の温泉地。親戚の用事で僕が彼女の家に寄った時に「予定空いてるなら一緒に行く?」と軽く誘われたのがきっかけだった。大きなイベントでもないのに、僕にとってはまるで特別な冒険のようだった。

駅で待ち合わせた彼女は、当時大学生。大人びた服装で、香水がふんわり香る。
僕は制服姿にリュック。並んで歩くだけで胸がざわついた。
年上の女性と二人で出かける、という事実が当時の僕には刺激的だった。

電車に揺られながら、会話は意外と普通だった。
僕の部活の話、彼女のバイト先での出来事、おすすめの音楽。
たわいもない会話なのに、言葉の端々に大人の余裕を感じた。
テンポは彼女に合わせた。僕の言葉を肯定しつつ、時々軽く茶化す。
同年代の女の子にはない空気だった。

目的地につくと、食べ歩きをしながら温泉街を散策した。
ソフトクリームを半分交換したり、手湯で笑い合ったり。
たった数時間の旅なのに、時間がゆっくり流れていた。
写真を撮ってくれた時、肩を寄せられただけで心臓が跳ねた。
距離が近い。けれど恋ではない。
その曖昧さが、逆に思い出の濃度を高くした。

帰り道、夕焼けのホームで電車を待ちながら彼女が言った。

「高校生っていいね。未来しかない感じがする」

僕は返事に迷った。
彼女は未来を見ていて、僕は今を見ていた。
同じ場所にいても、視点が違う。
その差に少し切なさを感じた。

電車の中で彼女は眠ってしまい、揺れるたびに肩が触れた。
触れないように少し身を引いたけれど、本当はもう少し近くにいたかった。
少年の欲と理性の間で揺れる、あの感じ。
触れたら終わりだと理解していたからこそ、何も起こらなかった旅は美しい。

日帰り旅行は夜に終わり、家の前で別れた時の「今日はありがと」という言葉が今でも残っている。
恋人ではない。家族。でも少しだけ特別。

大人になって出会い系で女性と会うようになり、あの日のことをよく思い出す。
年上の女性が好きなのは、あの旅のせいだと思う。
落ち着いていて、余裕があって、少し母性がある人。
僕はあの時の温泉街の匂いを、今もどこかで探している。

恋ではなかったけど、恋の入口だった。
終わりが曖昧な思い出ほど長く残る。
たった一日の旅が、大人になった今でも僕の価値観を静かに支えている。

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