【実録】20歳の俺と従兄弟の嫁の和歌山旅|恋ではないけど忘れられない時間

口コミ・体験談

 大学生の頃、俺には少し変わった友人関係があった。正確には友人ではなく「親戚」だ。従兄弟の嫁、歳は俺より六つ上。最初は親戚の集まりで顔を合わせる程度だった。けれど妙に話が合って、俺が就活で悩んでいた頃、彼女が気分転換にと誘ってくれたのが「和歌山へ行かへん?」のひと言だった。

 当時の俺は20歳、学生の自由さと未熟さの中にいた。相手は既婚者。普通なら一線を引くべき距離だ。でもその頃の俺には、そこまで深く考える余裕はなかった。単純に、誰かと遠出できることが嬉しかった。変な期待よりも「大人の女性と旅する」という特別感が胸を刺激していた。

 朝早くに大阪駅で合流し、特急で和歌山へ向かった。車内では彼女がコーヒーをご馳走してくれ、俺は緊張しながらも他愛のない会話を続けていた。好きな音楽、従兄弟と出会った時の話、結婚生活のリアル…大学の友人とは違う重みがあった。

 和歌山に着いてからは、海を見下ろせる展望台へ向かった。風が強くて、髪がなびく彼女の横顔が妙に印象に残っている。海は青くて空は広く、俺は少しだけ現実を離れた気分になっていた。昼食は海鮮定食。彼女は刺身を嬉しそうに食べ、俺の分まで一切れくれた。「若いんやからいっぱい食べ」その言葉に、胸がくすぐったかった。

 帰り道、電車が混んでいて自然と距離が近くなった。肩が触れるたび、心臓が少し速く打つ。でも彼女は楽しそうに笑うだけで、特別な素振りはない。俺の妄想だけが旅を少しドラマチックにしていたのだと思う。

 夕方に大阪へ戻った後、駅の改札前で解散した。手を振って別れた瞬間、胸の中に残ったのは淡い熱と、言葉にできない空白だった。
 恋だったのか、憧れだったのか。今思えば「優しくしてくれた年上女性」への単なる感情移入だったのかもしれない。もしあの時、変な期待で踏み込んでいたら、きっと苦い思い出になっていたはずだ。

 出会い系の体験談では刺激的な展開を期待する人もいると思う。でも実際の“人と人”はもっと曖昧で不完全だ。旅の間に手を繋ぐことも、恋人同士のような雰囲気もなかった。ただ、俺にとっては忘れられない温度がある。あの日の海、風、帰りの電車の揺れ。そして「大学生の俺」の幼さと初々しい感情。

 あの後、彼女は家庭の話を少ししてくれた。「完璧じゃないけど、帰る場所はある」その言葉を聞いて、俺は気持ちをそっと胸の奥にしまった。今なら分かる。あれは恋愛ではなく、人生の一場面を共有しただけの時間だった。でも、そういう時間こそ大人になってから思い返すと妙に温かい。

 もし出会い系で年上女性と仲良くなったとしても、踏み込む前に考えてほしい。感情に酔うのは簡単だ。でも一線の向こうには誰かの生活がある。俺が和歌山で学んだのは「大人の距離感」だったのかもしれない。

 青春の影みたいな思い出。今でも海を見ると、あの日の風を思い出す。

コメント

タイトルとURLをコピーしました