高校生の頃、4つ年上の従姉妹と過ごした「内緒の時間」**
高校生だった頃、家族の集まりでよく顔を合わせていた4つ年上の従姉妹がいた。
当時の自分にとって、4歳差というのは“大人と子どもの境界”のように感じていて、
彼女の落ち着いた話し方や、何でも知っているような雰囲気に、密かに憧れを抱いていた。
ある日、親戚が集まる日があって、従姉妹の家に行くことになった。
大人たちはリビングで話に花を咲かせていて、子どもだった僕は少し退屈していた。
そんなとき、従姉妹が「ちょっとこっちおいで」と声をかけてくれた。
案内されたのは彼女の部屋。
「内緒」と言われたのは、別に大げさな意味ではなく、
ただ“大人たちに邪魔されずに話したい”というごく普通の意図だったのだと思う。
でも当時の僕には、その「内緒」という言葉だけで心が少しざわついた。
年上の世界に招かれたような、不思議な感覚だった。
部屋には彼女の好きな音楽が流れていて、机の上には本が積まれ、
高校生の僕にとっては“洗練された世界”に見えた。
何を話すわけでもなく、学校のこと、部活のこと、
彼女が最近読んでいる小説の話など、たわいない会話が続いた。
ただ、その一つ一つが、自分には特別に感じられた。
思えばあの頃の僕は、
「年上=大人」 と無意識に思い込んでいた。
彼女は19歳。
今思えばまだ若いのに、
発する言葉がすべて“大人の世界の入り口”に感じられていた。
しかし、ふとした瞬間、
彼女も悩むことや、迷っていることがあると知った。
大学のこと、アルバイトの人間関係、将来の不安。
「大人でも迷うんだ」という当たり前のことを、
僕は当時、初めて実感した気がする。
その日、部屋で話した内容のほとんどは今は覚えていない。
ただ、彼女がときどき冗談を言って笑う表情や、
窓から入る午後の光の柔らかさ、
そういう場面だけが鮮明に残っている。
当時の僕は、それが“憧れ”なのか“好意”なのかも分かってなかった。
青春特有の、名前のつかない感情だったのだと思う。
今振り返れば、
あれは恋でも特別な関係でもなく、
ただ 「大人に近づきたい」 という気持ちが投影されていたのだろう。
その後も親戚の集まりでは何度か会ったが、
気持ちはどんどん落ち着き、
「従姉妹として、ちょっと話しやすい年上」
くらいの距離感になっていった。
青春期にはこういう“勘違い”が起きる。
相手の落ち着きや優しさを、
自分の感情が大きく膨らませてしまう時期がある。
しかしその経験は、
大人になった今の僕にとっても、
「年上への憧れ」や「距離感を測る感覚」 を形づくった大切な記憶になっている。
あの日の「内緒の会話」は、何も特別な意味はなかった。
でも、あの日を通して、
僕は自分の中にある“揺れやすい感情”と向き合う方法を学んだ。
青春期の心は、不器用で、まっすぐで、誤解しやすい。
でも、その不器用さこそが、
人を成長させてくれるのだと思う。


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