【実話】年下の芸能人からデートの誘い…断った俺はチャンスを逃した?

口コミ・体験談

 あれは数年前、俺がまだ余裕のある社会人一年目だった頃だ。仕事終わりの帰り道、友人に誘われて行った小さなライブハウス。クラシックピアノとポップスを融合させた若いアーティストが出演していた。名前をここでは伏せるが、テレビにも時々出ていた実力派。ステージの中央で光を浴びる彼女は、俺より年下なのに大人びた眼差しで鍵盤を叩き、観客を惹きつけていた。俺はその姿に圧倒され、気づけば終演後のサイン会の列に並んでいた。

 順番が来たとき、彼女は俺の名刺をじっと見つめて「この後少し時間ある?」と聞いてきた。突然すぎて頭が真っ白になり「え、あ、まあ…」としか言えなかった。周りのファンは彼女に話しかけたそうにこっちを見ていたのに、彼女は俺にだけ特別なテンションで笑いかけてきた。

 ライブハウスの隣にあるカフェに移動し、夜のコーヒーを飲みながら会話が弾んだ。彼女はテレビ出演の裏話、音大時代の苦労、恋愛よりも音楽が優先になってしまう悩みを素直に語った。俺はただ聞き役になったが、その時間は予想以上に心地よかった。彼女は年下なのに、芯があり、夢に向かう真剣さがまぶしかった。

 そして帰り際。彼女はスマホを差し出して「よかったらLINE交換しませんか?今度…デートとか」と言った。その瞬間、胸が大きく跳ねた。俺は内心すごく嬉しかった。でも同時に思った。「芸能人と恋なんて成立するのか?ファンの一人なのに?自分なんか相手にして大丈夫なのか?」

 結果、俺は「仕事が忙しくて…また今度」と曖昧な返事をしてしまった。彼女は一瞬だけ寂しそうな顔をしたが、「わかった、またライブ来てね」と笑顔に戻った。でも、その後俺は結局連絡せず、ライブにも行けなかった。

 今振り返ると、あの時もっと素直になれたら良かったと思う。恋に発展するかは別として、彼女の世界を一度覗いてみるだけで良かったのだ。食事に行き、音楽の話を聞き、互いの価値観を知れたかもしれない。デートは恋の約束じゃなく、ただの時間の共有だ。カメラのフラッシュを浴びる表の彼女ではなく、素の彼女に触れられる機会だったのかもしれない。

 出会い系に限らず、人生では時々「めったに来ないチャンス」が訪れる。不釣り合いに見える出会いほど、人は臆病になる。俺もそうだった。失敗したくない、期待させたくない、周囲の目が気になる…そんな理由でチャンスを静かに手放してしまった。でも今思えば、断った理由は全部「自信のなさ」だった。

 もし同じ状況がもう一度来るなら、俺はこう言うだろう。

「行こう。せっかくだから一緒に楽しもう」

 恋人になれなくてもいい。関係が続かなくてもいい。その日がたった一度の思い出でもいい。後悔よりも経験の方が心を豊かにする。人生は選択の連続で、その瞬間にしか掴めない景色がある。

 あの日、ピアノの音が体に響いた夜。年下の芸能人に誘われたドキドキ。俺は人生が少し揺れた瞬間を、怖さで見送ってしまった。
 でも、その悔しさが今の俺に勇気をくれる。
 次に誰かを好きになったとき、誘われたとき、俺はもう逃げない。

コメント

タイトルとURLをコピーしました