大学3年の夏。ゼミ合宿で長野のペンションに泊まった時のことです。夕食が終わり、夜のミーティングがはじまったばかり。私の斜め前の席には、同じゼミで気になっていた女の子が座っていました。普段はあまり話す機会はなかったけれど、笑うとえくぼができる可愛い子で、私は密かに「もっと仲良くなれたら」と思っていました。
部屋は少し蒸し暑く、全員が眠気と戦いながら教授の話を聞いていたタイミングです。ふと視線を感じ、顔を上げると彼女がこちらを見ている。視線が合った瞬間、少し照れくさくて私は微笑み返しました。──その直後です。
「……あれ?」
彼女の体がふっと前に倒れ、そのまま机に腕を滑らせて崩れるように失神。周囲は一瞬静まり返り、次の瞬間には女子が駆け寄り、誰かが「先生!〇〇さんが!」と声を上げました。
私は驚きと焦りで動けませんでした。ただ心の中はぐちゃぐちゃでした。もし私が見つめ返したせいだった?体調が悪かった?それとも緊張?そんなわけない、と思いつつも、なぜか胸がざわざわしたのを覚えています。
その夜、彼女は保健室代わりの部屋で休むことに。私は心配で眠れず、廊下の自販機で買ったスポーツドリンクをこっそり差し入れました。部屋の前に置いておこうと思っただけなのに、ドアが開き、彼女が顔を出したんです。
「心配かけちゃったね…ありがとう。」
弱々しい笑顔。けれど、その笑顔は強く胸に残りました。その後、私たちは少しずつ話すようになり、帰りのバスで隣の席に座るほど距離が縮まりました。結局付き合うところまでは行かなかったけれど、あの夏の出来事は今でも鮮明に思い出します。
倒れた原因は、緊張と寝不足に加えて、食事とミーティング室の暑さが重なったらしいです。つまり、私のせいではなかったということ。ただ、視線が合ってドキッとした瞬間に倒れたと思うと、少しだけ特別な気分になります。
出会いはドラマのように突然訪れることもある。
あの時、彼女にスポドリを渡さなければ、距離は縮まらなかったかもしれない。小さな行動が、恋のきっかけになることを知った合宿でした。


コメント