2024年秋。
本来の予定は、好きな女の子と一緒に赤城山の紅葉を見に行くことだった。ネットの写真で見た真っ赤な景色を想像しながら、ドライブ中の車内は少しだけ浮ついた空気。けれど、いざ登ってみたら紅葉はほとんど終わり。枝だけが風に揺れている風景に、ふたりで苦笑したのを覚えている。
「このまま帰るのも、なんかもったいないよね」
彼女のその一言で、急きょ別の行き先を探すことになった。地図を開き、目に飛び込んできたのが 高崎・少林山達磨寺。
正直、その時は「聞いたことあるな」くらいの認識だった。だるまの寺、合格祈願、縁起物…。観光スポットとして有名だと知ってはいたが、行く理由がなかった。でもその日は違った。予定が崩れた帰り道に、ふと立ち寄れる場所があるだけで救われる気がした。
境内に着くと、空気が少し冷たくて気持ち良かった。石段を登りながら、いつもより彼女との距離が近かった気がする。無言でも気まずくない関係って、なんだか特別だ。朱色のだるまがずらりと並ぶ売店を眺めながら、ふたりで「どの表情が好き?」なんて会話をした。
小さな会話ほど、あとで思い出に残るものだと思う。
達磨寺は、派手なデートスポットではない。でも落ち着ける場所だった。観光客が少なかったのもよかった。休憩ベンチに座りながら、景色を眺めた時間は今でも鮮明に覚えている。
あの日は紅葉を見る予定だった。でも結果的に、予定外の目的地の方が記憶に残った。それが恋愛の不思議なところだと思う。
帰りの車で、彼女は少し眠そうにしていた。横顔を見ながら、「ずっと続けばいいな」なんて勝手に思っていた。
あれから時間が経ち、今は連絡もたまにしか返ってこない。距離があると感じる日もある。それでも、達磨寺で過ごしたあの静かな時間は、今も胸に残っている。
恋は形が変わっても、思い出は消えない。むしろ色濃くなる気がする。
予定が外れたからこそ生まれた時間。
偶然の寄り道が、いちばん心に残るデートになることもある。
もし誰かと出かけるなら、完璧な計画よりも余白を残しておく方がいいのかもしれない。思い通りに行かない日ほど、あとで笑って話せるから。
また誰かと行く日が来るだろうか。
同じ景色でも、隣にいる人が違えばまったく別の思い出になる。
恋は続かなかったかもしれない。でも、あの日の達磨寺は確かに暖かかった。


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