東京駅から高崎線に揺られながら、私は静かに窓の外を眺めていた。都内のビル群が遠ざかるにつれて、景色はだんだんと緑を増やし、空気が柔らかくなっていく。今日会いに行くのは、出会い系アプリで知り合った熊谷市の彼。メッセージで感じた優しさと落ち着きがどこか心に残っていて、気づけば私は片道2時間の切符を買っていた。
「これって、遠距離恋愛のはじまりなのかな?」
そんな問いを胸の奥で転がしながら、電車はゆっくり、だけど確かに前へ進んでいく。
熊谷駅に着くと、少し照れたように笑う彼が改札前で待っていた。
写真より少し背が高く見えたのは、秋の風でコートが揺れていたせいかもしれない。
「来てくれてありがとう」
その一言だけで、遠くまで来た不安がするっと消えた。
向かったのは紅葉が見える公園。色づいたモミジと銀杏が夕陽に照らされ、風が吹くたびに金色の葉が舞う。まるで世界全体が、恋に追い風をくれているようだった。
二人で写真を撮り合ったり、コンビニで買った温かいコーヒーを飲んだり、手が触れそうで触れない距離にドキドキ。
彼は歩幅を合わせてくれて、話す内容も落ち着いていて、笑うと少年みたいだった。
「遠いのに…無理してない?」と聞かれて、私は笑って首を振った。
—会いたいから来た。それだけで十分だったの。
帰りの電車、窓に映る自分の顔は少し赤くて、秋色みたいだった。
恋って、紅葉と似ている。
少しずつ色づいて、気づかないうちに心が染まっていく。
あの日の景色を思い出すと、今でも胸の奥があたたかくなる。
もしかしたら恋は、遠距離でも、距離より気持ちの濃さで決まるのかもしれない。
また会いに行きたい。そう素直に思えた日だった。
出会い系は怖いこともあるし、うまくいかないこともある。
でも、ちゃんと向き合えば、こうして誰かと季節を共有できる。
秋の紅葉のように儚くても、美しい恋の瞬間だった。


コメント